「いまからはじめる電子工作」:設計製作の要点

■3.3 電圧可変安定化電源の設計製作(p.133〜)

 ●3.3.3 9VのACアダプタ用可変安定化電源(p.137〜)
【2006/4/7掲載】詳細な解説および回路図は本書をご覧下さい。回路図はp.138の図3.32です。
【2006/5/27】EAGLEによるプリント基板パターンを掲載しました!(スクロールして一番下)

訂正します:
・p.138 図3.32 回路図中の可変抵抗VRの端子番号1と3が互いに逆です。
・p.138 下から2行目 左側(1)が上側(出力側、右側(3)がグラウンド
         → 左側(3)が上側(出力側、右側(1)がグラウンド
# 1と3の交換、以後統一します。
 さて、いよいよ3章の目的の電圧可変安定化電源の設計製作です。本文にもありますように、少し以前のトランスを用いたACアダプタ(最近のスイッチング電源タイプではない物)は、トランス+センタタップ式全波整流(ダイオード2個)+電解コンデンサ1個の構成をしていて、負荷を接続したときの電圧降下率η、出力抵抗とも大きく、電源(電圧源)の理想である「電圧一定、出力抵抗0」にはほど遠く、例えばアンプに使えば音が濁るなどの不満が生じます。また、出力電圧は固定で、電池の代わりに使おうとすれば、3V,4.5V,6V,9V,12Vなど幾種類も用意しなければなりません。
 そこで登場するのが、下の写真の「可変安定化電源」です。ACアダプタからどれだけ改善できるかを知るために、9VのACアダプタを電源とします。電子工作は「取りあえず、テスタ一丁さえあれば始められる」ものですが、三種の神器と言えば「電源」、「発振器」、「オシロスコープ」で、これらがあれば、何が起こっているのが把握できるようになります。その第一歩として、まず電圧可変安定化電源を作ってみるのは大変大きな価値があります。
  回路図(p.138の図3.32)についてですが、トランジスタQ1(2SC1815)のベース-エミッタ(約0.6V)と直列に赤色LEDのアノード-カソード(約2V)の約3V弱(説明上Vrefと呼びます)が一定電圧源です(p.139の図3.33のグラフをご覧下さい。確かにベース電圧は出力電圧を可変しても一定です)。
 一方で、出力電圧はVR(10kΩ)とR3(2kΩ)で分圧しているように見えますが、そうではなく、その下側(説明上Rref=(VRの2-31端子間+R3)とします)とトランジスタQ1のベースが接続されているので、Rrefに流れる電流はIref=Vref/Rrefの一定電流になります。それで、上側の抵抗(VRの13-2端子間)にも同じIrefが流れますから、、、そうです両端に発生する電圧が一定電圧となって積み上がるのですね。
 こう理解できれば、可変抵抗のを回路図の上側すなわち出力側に回すと出力電圧が低くなることが理解できます。それで、端子番号は13(左に回した方なのです)

.
【部品配置状況】ケースには「ガチャポン」のプラスチック・カプセルを用いました。DCジャックと可変抵抗および小パワートランジスタQ2(2SD882)(の放熱器)を取り付けるので、それを土台として空中配線をしています。カプセルの半分は透明ですから、赤色LEDが光っているのが見えて、動作しているのが分かります(パイロットランプ代わり)
 ユニバーサル基板の切れ端を使用しています。小パワートランジスタQ2(2SD882)の放熱器をカプセルに取り付けると基板の位置も決まります。DCジャックと可変抵抗は、その位置を目安に決定します。

.
【配線状況】空中配線は、すずメッキ線を用いていますが、各部品の配置が決まれば、可能な部品はあらかじめ空中配線しておいてから、カプセルに取り付けた方がよろしい(ラク)です。ただし、DCジャックと出力端子だけは構造上、カプセルの外側から取り付けますので、あらかじめ取り付けてからでないと配線できません。
.
【基板裏面】:参考までに、基板裏面の写真を示します。カプセルへの部品の取り付け状況も分かると思います。

 【p.131 表3.6 計算表(Excel)】
 下の表を「右クリックして保存」すればExcelファイルをダウンロードできます。パラメータを変更して、いろいろ試してみてください。自分で設計できるのは、大変楽しいことですし、思い通りの値が出ていると嬉しくなります :-)
.
 いかがでしたでしょうか、この電圧可変安定化電源は、ダイオード+トランジスタ+抵抗の直流回路(ここでは変動電圧、つまり交流分は考えていません)の「カラクリ」を満喫できて大変勉強になります。ぜひ勉強して、実験してみてください。
 また、性能的にもp.140の図3.34の実測グラフから、非安定化電源(ACアダプタのまま)よりも、電圧変動率および出力抵抗とも数分の1から十分の1くらいに小さくすることができているのが確認できます。
 なお、定電圧源として専用のツェナーダイオードではなくLEDを用いたのは、ON電圧が低いことと、ノイズが少ないことからです。このため、最低電圧は約3.0Vに抑えることができ、乾電池2本の代わりに使うことができます。さらに、0Vから可変したい、またもっと性能を向上したい場合には、次の「3.3.4 高精度で0V〜15V可変安定化電源(p.141) 」に挑戦してみてください。

【メータ組込み例】掲示板にアップしたように、秋月電子通商のLEDデジタルパネルメータ[PM-129E(BLACK)](通販番号 M-1059、\1,000)を組み込んで見ました。大変便利ですが、7セグメントLED式ですから結構電流を食ってしまいます(60mA)。また、小数点以下2ケタ目まで可変抵抗で合わせるのは難しいですが、これは電圧可変範囲が広いためで、可変抵抗の両端に固定抵抗を付けて可変範囲を狭くすれば改善できます。それでも、次の「3.3.4 高精度で0V〜15V可変安定化電源(p.141) 」では小数点以下3ケタめまでビシッと正確に合わせることができますので、挑戦してみてください。


【EAGLEによるプリント基板パターン】
 回路図およびプリント基板パターンCADの「EAGLE」により作成したプリント基板パターンです。いずれかの機会に、エッチングあるいはプリント基板加工機で製作して「電子工作教室」を開催する予定です。
部品面
 トランジスタのピン配置は、2SC1815および2SD882とも 正面(部品名表示面)から見て左から順にE,C,Bです。「笑ってごらん、エクボができる、と覚えます :-)」
.
パターン面
←このパターン図を右クリック+保存すると、実寸のPDFファイルがダウンロードできます。

Return to Main page