6CW5(T) USB Head-phone amp / Cyber WorkShop in Maizuru
6CW5(T) USB ヘッドホンアンプ (2010/7/19)
真空管アンプの製作は、かなりの期間、ブランクがあったのですが、大阪や東京に出張に行くついでに、
いろいろと部品を買い込んでいました。(一番下の部品表のように約25,000円ですが、これは探しようによって
いくらでも上下します)
さて現在では、オーディオもすっかりディジタルが主流になり、パワーアンプもディジタルアンプキット
で簡単に数十Wの出力が得られるようになっています。
そこで、思いっきり割り切って、小出力のヘッドホンアンプを真空管で製作することにしました。これは、
電源電圧や出力を低く抑えることによって、部品を入手しやすく、また余裕を持たせた動作で、故障の回避や
長寿命を狙いたかったからです。
できあがったのが上の写真のアンプです。期待以上の良い音でウットリします :-)
この真空管アンプ自体は、大変シンプルな、12AX7 + 6CW5(3極管接続)シングルアンプであり、
後述のように設計計算上では0.56W+0.56Wしか出力がありませんが、ヘッドホンで聴く限り耳を聾する
音量でボリュームを80以上には上げられないほどです。
また低音が非常に明確に出ていて、
楽曲のベースラインがしっかり聞き取れます。低音ブースト回路はごく控えめな効果ですが、
十分なようです。
そして、なんといっても特筆すべきは、ヒータが交流点火にもかかわらず、ハムノイズおよび残留ノイズの少なさで、
ほとんど皆無に感じます。それでも、深夜にヘッドホンで聴いていると、確かに存在はして
いるようです。これは、電源回路が物量作戦で大容量の平滑コンデンサとチョークコイル
(重要です)を投入していることと、NFBを控えめながら12.6dBかけているからのようです。
(昔、ラジオの製作では「裸アンプを作れる腕があるなら、少しだけNFBをかけると
ずっとよくなるヨ」とありました。)
どうやら、真空管最後期のカラーテレビ用MT管は、すばらしい性能を持っているようです。
また、このアンプには、BurrBrown社のPCM2704という、パソコンのUSBから高純度の
アナログ信号を出力を得るICのキット
VICS社:TI/バーブラウンPCM2704使用USBオーディオキット(新定価2,625円)
を用いています。
# このICは町田の大学院時代の先輩である最新オーディオ機器の会社・
ドクタースリー社
の近藤社長が設計開発し、特許を取得されているものです。
# このような、おおがかりな真空管アンプがシンドイ方、あるいはリファレンス(参考用)の
ヘッドホンアンプには、ドクタースリー社
で通販できる下の写真のDenDAC(USBメモリくらいの大きさで、
コダワリの部品を使用しています)をお奨めします。
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USBオーディオ DAC (DENDAC)
「高級オーディオで有名なバーブラウン製のD/Aコンバーター」を搭載した超小型USBヘッドホンアンプです。大きな、エルナー社製高性能オーディオ用電解コンデンサPureCOREを使っていながらこのサイズに仕上げられました。
また、 九工大世界トップ技術「画や音をもっときれいに 〜世界最速のクロックIC〜」 (小林 史典・近藤 仁志)最短時間PLL応用製品です。 オーディオ歪の原因となるDACの動作クロックにはとことんこだわっています。
型番 USB-DENDAC、定価 12,600円(税込)、販売価格 12,000円(税込)
兎に角、ヘッドホンでも低音が良く出て音量も十分で大満足なのですが、
できれば高効率のバックロードホンを自作したくなってきました :-)
真空管について
初段管の12AX7は定番の高増幅率双三極管です。下の写真は早川電気(現在のシャープ)の球です。
出力管はテレビの垂直偏向用発振および低周波電力増幅用の6CW5です。
初歩のラジオ編集部編:オーディオ真空管アンプ製作ガイド,2,310円、誠文堂新光社
には、菊池博和氏の6CW5(T)プッシュプルアンプの製作記事がありますが、
「真空管全盛時代には、高品位のアンプに適した3極出力管として、6G-A4や6R-A8があったが、
今では入手困難となってしまいました。...しかし、諸先輩方の研究により6CW5を3極管接続
すると6R-A8に近い特性になるということが知られて,,,」、「さらに残留ノイズの少ないのも
特筆物で、,,,夜間に静かに聴く場合でもほとんど残留ノイズは聞こえないので、静寂の中でも
気持ちよくならすことができます。」と紹介されています。また入手性も大変良く、
秋葉原のラジオデパート3Fの三栄電気でわずか350円(ユーゴスラビア製)で買えます。
MOS-FETより安い!!??
下の写真は、左から6R-A9、30A5(6CW5の元になったMT7ピンの球で内部はソックリ)、
6CW5、そして12AX7です。ガラスのMT管なのでどの電極がどのピンに接続されているのか
見て取れるので、内部構造の勉強になります。
回路図と設計について
下の回路図のとおり、もっともプリミティブなA級シングルアンプです。
それだからこそ、各部品には良品が要求されます(部品感度が高い)。なにしろ生の音楽信号が
通過するわけです。とはいっても、部品点数も少ないので、日本橋や秋葉原を
探索すると、きっとお気に入りの部品が見つかるでしょう。
初段は定番の12AX7で十分なゲインを稼ぎ、カップリングコンデンサで
出力段に接続します。このコンデンサは(かなり前に、名古屋の大須のアメ横で
買った、フランス製のMP(メタライズド・ペーパ)コンデンサです。
出力段は6CW5の三結です。カソードのバイパスコンデンサは秋月の
マザーボード用(パソコン用)1500μF/16Vです。
低音ブーストは、NFB回路で0.022μFを無視できる周波数でNFBがかかり、
その他の周波数ではかからないので、40Hzくらいにピークができる低音
ブースト回路になります(ラジオの製作バックナンバーより)と紹介されて
いるものです。ごく控えめですが効果的です。
最も重要なのが電源回路で、良く水の流れに例えられますが、上流からだんだん大きな池
に貯めていき、レギュレーションを良くします。電源電圧がトランス出力で100Vなので、
160V耐圧の電解コンデンサが使えるので大容量を投入しても費用はかさみません。また、
チョークトランスは非常に重要で、ハムの追放には効果大です。なお、電源トランスは
なくてもよいのですが、危険がアブナイので絶縁トランスを使用しました。安くて安全なので
お奨めです。ヒータトランスは以外とかさばりますので、シャーシ裏に余裕が無くなり、
結局、交流点火にしました。片側をフィルムコンデンサでアースに落としているだけですが、
何の問題もないようです。やっぱり、傍熱型のMT管の面目躍如と言ったところでしょうか。
設計に関しては、まず電源電圧が100Vであることから始まります。そして、次に出力トランスが
春日無線の5Wシングル用にするため、5k:16Ωを2.5k:8Ωとして使うとすれば、あとは特性図上で
作図するだけです。特性図のカーブのキレイな所だけを使っています。
結局出力は0.56W、プレート損失は5.1Wで、許容損失は12Wなので、ごく軽い動作で
長寿命が期待できます。
シャーシの加工について
ここが肝心です。私は現物あわせの方針で、方眼紙で当たりを取って、あとはほとんど手作業です。
なかなか塗装までは大変なのですが、なれればそうでもありません。よくペーパで下地を作り、
火を当てて完全に乾燥し、スプレーでなんども重ね塗りします。焦らないのがコツです。
写真集1
写真集2
部品表
品名
|
番号
|
値
|
耐圧(電力)
|
個数
|
単価
|
価格
|
備考
|
真空管
|
V1
|
12AX7
|
6.3V0.3A
|
1
|
\1,000
|
\1,000
|
|
真空管
|
V2,3
|
6CW5
|
6.3V0.76A
|
2
|
\350
|
\700
|
ラジオデパート三栄電気
|
真空管ソケット
|
|
MT9pin
|
|
3
|
\200
|
\600
|
|
ボリューム
|
VR1
|
500kΩ(A)
|
|
2
|
\250
|
\500
|
|
金属被膜抵抗
|
R1
|
10kΩ
|
1W
|
2
|
\20
|
\40
|
デジット
|
金属被膜抵抗
|
R2
|
270k
|
1W
|
2
|
\20
|
\40
|
デジット
|
金属被膜抵抗
|
R3
|
100k
|
1W
|
2
|
\20
|
\40
|
デジット
|
金属被膜抵抗
|
R4
|
330
|
1W
|
2
|
\20
|
\40
|
デジット
|
金属被膜抵抗
|
R5
|
330
|
1W
|
2
|
\20
|
\40
|
デジット
|
金属被膜抵抗
|
R6
|
100
|
1W
|
2
|
\20
|
\40
|
デジット
|
金属被膜抵抗
|
R7
|
33k
|
1W
|
2
|
\20
|
\40
|
デジット
|
金属被膜抵抗
|
R8
|
1M
|
1W
|
2
|
\20
|
\40
|
デジット
|
金属被膜抵抗
|
R9
|
75k
|
1W
|
2
|
\20
|
\40
|
デジット
|
セメント抵抗
|
R10
|
47
|
10W
|
1
|
\100
|
\100
|
|
MPコンデンサ
|
C1
|
0.33μF
|
600V
|
2
|
\280
|
\560
|
名古屋大須アメ横、フランス製
|
電解コンデンサ
|
C2
|
1500
|
16V
|
2
|
\70
|
\140
|
秋月P2366、PC用
|
フィルムコンデンサ
|
C3
|
0.022
|
600V
|
2
|
\200
|
\400
|
オレンジドロップ
|
電解コンデンサ
|
C4
|
560
|
160V
|
2
|
\300
|
\600
|
|
電解コンデンサ
|
C5
|
120
|
160V
|
2
|
\200
|
\400
|
ラジオ会館 若松通商
|
電解コンデンサ
|
C6
|
100
|
160V
|
1
|
\200
|
\200
|
|
電解コンデンサ
|
C7
|
47
|
450V
|
1
|
\200
|
\200
|
|
電解コンデンサ
|
C8
|
0.1
|
400V
|
1
|
\50
|
\50
|
デジット
|
出力トランス
|
T1
|
5k:16
|
5W
|
2
|
\2,600
|
\5,200
|
春日無線 OUT-54B-57
|
ヒータトランス
|
T2
|
100V:6V
|
18VA
|
1
|
\1,470
|
\1,470
|
大阪光波 SIA-0300 デジット
|
電源トランス
|
T3
|
100V:100V
|
60VA
|
1
|
\4,200
|
\4,200
|
豊澄電源機器 TZ-106S
|
チョークトランス
|
T4
|
5H
|
100mA(96Ω)
|
1
|
\2,000
|
\2,000
|
春日無線 6B01A
|
入力スイッチ
|
SW1
|
トグル6P
|
|
1
|
\200
|
\200
|
|
低音ブーストスイッチ
|
SW2
|
トグル6P
|
|
1
|
\200
|
\200
|
|
電源スイッチ
|
SW3
|
トグル2P
|
|
1
|
\300
|
\300
|
|
ヒューズホルダ
|
|
標準・管
|
|
1
|
\200
|
\200
|
|
ヒューズ
|
|
標準・管
|
1A
|
1
|
\20
|
\20
|
|
ノイズキラー
|
CR
|
0.1+500
|
|
1
|
\50
|
\50
|
|
ヘッドホンジャック
|
|
ステレオ
|
6.5mm
|
1
|
\300
|
\300
|
絶縁用
|
ライン入力端子
|
|
RCA白、赤
|
|
2
|
\150
|
\300
|
秋月C64/C65
|
アース端子
|
|
バナナ
|
|
1
|
\100
|
\100
|
|
USBオーディオキット
|
|
|
|
1
|
\2,625
|
\2,625
|
VICS社
|
オベントシャーシ
|
|
アルミt1
|
245x140x50
|
1
|
\800
|
\800
|
リード S-5相当
|
その他
|
|
|
|
4
|
\300
|
\1,200
|
ゴム足/ブッシュ,ビスナット
|
|
|
|
|
|
合計
|
\24,975
|
概算、誤差アリ |